まぐまぐ!
バックナンバー

西行辞典

件名: 西行辞典 第345号(170311)
2017/03/11

          西行上人集追而加書・万代集・夫木抄)    

○河合

川と川の合流点。

○まきのすそ山

(まき)は真木と表記して、杉、ヒノキ、松などの建築用材。
そういう植物が生えている山裾のことです。

○石たてる

歌からは何故に石を立てるのか不明のままです。石を立てたからと
言って、涼しくなるとはどういうことなのか理解できないままです。
ここは石を立てたことと、涼しいということとはつながらず、別の
ことを意味するものではないかという疑念も起こります。

「筏を流すために石を置いて川の流れを調整していたか…」と
和歌文学大系にはあります。樵は木を切断し筏にして流します。

○杣人

前述参照。

(03番歌の解釈)

「川も二つが交わった。真木立つ山も裾が開けている。そんな
立派な自然の庭に杣人は石を立てている。その涼しそうなこと。」
                (和歌文学大系21から抜粋)

「河の合流点、そこは真木の立つ山裾の所だが、そこに石を
立てて休み、木樵はどんなに涼しいことであろう。」
            (新潮日本古典集成山家集から抜粋)

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
【杉】
 
01 聞かずともここをせにせむほととぎす山田の原の杉の村立
     (岩波文庫山家集46P夏歌、263P残集・御裳濯河歌合・
              新古今集・御裳濯集・西行物語)

○せにせむ

「瀬にせむ」と書き「瀬」は、拠って立つ場所を表します。
「立つ瀬がない」という場合の「瀬」と同義です。
「せむ」の(せ)はサ行変格活用「す」の未然形、(む)は助動詞
(む)の終止形。「せむ」で(しよう・したい)という希望なり意志
なりを表します。
「せにせむ」で(場所としよう)(ここにしたい)という意味になります
 
○山田の原

伊勢神宮外宮のある一帯の地名。外宮の神域。古代から山田の町の
人たちと外宮は密接に結びついてきました。

○杉の村立

杉の木が林立している状態のこと。

(01番歌の解釈)

「たとえ鳴く声をきかなくても、ここを時鳥を待つ場所にしよう。
山田の原の杉の群立っているこの場所を。」
               (和歌文学大系21から抜粋)

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

02 初雪は冬のしるしにふりにけり秋しの山の杉のこずゑに
             (岩波文庫山家集247P聞書集161番)

○秋しの山(秋篠山)

奈良市秋篠町。秋篠寺があり、その付近の山を指します。
ですが現在では固有名詞かどうか分かりません。過去に秋篠寺と
西大寺の間で秋篠山を巡っての争論があったようですが、現在では
それがどの山のことか特定することはできないようです。

秋篠の歌はもう1首あります。

 秋しのや外山の里や時雨るらむ生駒のたけに雲のかかれる
            (岩波文庫山家集90P冬歌・宮河歌合・
                新古今集・玄玉集・西行物語)

(02番歌の解釈)

「初雪は冬の来た目印として降ったのだなあ。秋篠山の杉の梢に。」
                 (和歌文学大系21から抜粋)

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

03 千木たかく神ろぎの宮ふきてけり杉のもと木をいけはぎにして
              (岩波文庫山家集261P聞書集261番)
       
○千木

神社建築に見られる、屋根の上の両端の屋根から突き出た形で
交差している二本の木のことです。祀られている神が男神か女神に
よって千木の先端の形が変わります。

○神ろぎの宮

祝詞の中の言葉とのことです。「神ろぎ」と「神ろみ」の言葉があり、
「イザナギ」は男神、「イザナミ」は女神のように、「カムロギ」は
男神、「カムロミ」は女神を指すようです。
ただしこの歌の場合は女神ではあるけれども主祭神としての天照
大神を指していて、天照大神の居る宮ということになります。
 
○杉のもと木

杉の原木の表皮を剥いだままの意味のようです。しかし神宮の正殿の
屋根は萱や檜皮で葺いているようです。檜の皮を使う以上は、杉の
皮で葺いても不思議はないように思います。

○いけはぎに

杉の木を切り倒して、しばらく乾燥させてから剥いだ皮ではなくて、
乾燥させないままの生の皮を剥ぐということです。
(いけはぎ)は大祓えの儀式における祝詞の文言にあるようです。

(03番歌の解釈)

「千木を高く構え、大神の神殿の屋根を葺いたよ。杉の原木の
皮をはいで。」
               (和歌文学大系21から抜粋)

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

04 杜鵑さつきの雨をわづらひて尾上のくきの杉に鳴くなり
              (岩波文庫山家集263P残集8番)

○杜鵑

杜鵑(とけん)と表記してホトトギスと読みます。岩波文庫山家集に
「杜鵑」表記は他に2首あります。

      隣をあらそひて杜鵑を聞くといふことを
 
 誰がかたに心ざすらむ杜鵑さかひの松のうれに啼くなり
  (岩波文庫山家集263P残集4番・西行上人集追而加書・夫木抄)

      杜鵑によせて思ひをのべけるに
  
 待つやどに来つつかたらへ杜鵑身をうのはなの垣根きらはで
              (岩波文庫山家集263P残集5番)

○さつきの雨

五月雨のこと。梅雨のこと。

○尾上のくき

山の上のこと。山の高い所。山頂のこと。
「尾上の塚」は山の高いところにあるお墓。
「尾上のくき」は山の上のほうにある洞窟など。

(04番歌の解釈)

「ほととぎすは毎日降りつづく雨をいやがって、山の頂にある
洞穴のように入りこんだ窪地にある杉の木にこもって鳴いているよ。」
           (渡部保氏著「山家集全注解」から抜粋)

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

05 朝日さすかしまの杉にゆふかけてくもらず照らせ世をうみの宮
         (岩波文庫山家集279P補遺・新潮欠番・夫木抄)

○かしまの杉

不詳です。佐佐木信綱博士が夫木抄から補遺として補入した「題しらず」
の4首のうちの一首です。他の3首は伊勢神宮の歌ですから、この歌も
伊勢神宮の歌と断定しても良いかと思います。
常陸の国の鹿島神宮の歌の可能性はないでしょう。

○ゆふかけて

ゆふ「木綿」は植物の楮(こうぞ)の皮を剥いで、その繊維を
蒸したり水にさらしたりして白くして、それを細かく裂いて糸
状にしたものです。

同じ字を用いても(もめん)は綿の木の種子から取る繊維を
言います。

○世をうみの宮
            
現在、伊勢神宮内宮と外宮には別宮、摂社、末社を合計すると
合わせて合計125社があります。
「世をうみの宮」はそれらのうちの一社ではなくして、伊勢神宮
そのものを指しているように思います。
 
(05番歌の解釈)

「朝日のさしているかしまの杉(かしま未詳)に木綿(斎麻の転)
をかけて、おまつりをして、曇らずに照らして下さいよ。この世を
うみの宮の神様よ。(題詞によれば、うみの宮は伊勢にある
神社か。)」
         (渡部保氏著「西行山家集全注解」から抜粋)
                
************************************************************

  (後記)

長く続けてきた「まかり・まかる」の項目も今号で終わります。

これまでには名詞でも項目化していないのがいくつかあります。
必要もないと考えて意図的に排したもの、さらには気が付かずに
記述漏れのあるもの。それらについては今はまだ精査する状況に
ありません。「西行辞典」が一応の完了を見てから、考えてみます。

視力も衰え、文庫の山家集や資料の書物を読むのも虫眼鏡が必要に
なっています。この先、きちんと発行できるのか心もとないもの
ですが、ある程度間が開いたとしても発行できる状況にある限りは
発行します。頑張りたいと自身を鼓舞しつつ…。

本日の11日は東日本大震災から6年目に当たります。大震災当日、
同時刻、私は大原野にある正法寺で梅の花を見ていました。夕方、
帰宅後に未曽有の大惨事をテレビ報道で知りました。息を飲むしか
ない、言葉を出すのもためらわれる圧倒的な状況に、ただただテレビ
画面を見入るばかりでした。
すでに6年が経過したこと、その速さに改めて驚きます。
大震災が原因で亡くなられた、たくさんの方々のご冥福を私なりに
お祈りします。

************************************************************

■  登録/解除の方法
  http://www.mag2.com/m/0000165185.htm

 ◎ メールマガジン「西行辞典」 は、
   上記URLよりいつでも登録及び解除が可能です。

■ ご要望、ご意見は下記アドレスまで。
  siokaze308@yahoo.co.jp

=============================

◎ 「西行辞典」第345号 2017年03月11日発行

◎ 発行責任者 阿部 和雄
   http://sanka11.sakura.ne.jp/

◎ 発行システム インターネットの本屋さん「まぐまぐ」を
 利用させていただいています。
  『まぐまぐ』 URL: http://www.mag2.com/

=============================

<戻る

前号|次号|最新
バックナンバー一覧

s登録する
解除する

利用規約
ヘルプ
メルマガ検索
マイページトップ
まぐまぐ!トップ