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西行辞典

件名: 西行辞典 第352号(170826)
2017/08/26
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      讚岐にまうでて、松山と申す所に、院おはしましけむ
      御跡尋ねけれども、かたもなかりければ

05 松山の波に流れてこし舟のやがてむなしくなりにけるかな
         (岩波文庫山家集110P羇旅歌・新潮1353番・
       西行上人集・山家心中集・宮河歌合・西行物語)

○讃岐

現在の四国、香川県のこと。崇徳院は讃岐の院と呼ばれていました。

○松山

現在の香川県坂出市林田町あたりを指します。白峯も松山村でした。

○院おはしけむ御跡

保元の乱に敗れた崇徳上皇が讃岐の国に配流されて、住んでいた
場所。香川県坂出市林田町の雲居御所跡のことだと言われます。
讃岐での崇徳院の行在所は、保元物語によれば松山(坂出市)から
直島(香川郡)、次いで志度(さぬき市)にと移転して、志度で崩御。
1164年8月26日。46歳。
坂出市の白峰稜に葬られました。
 
○かたもなかり

松山の行在所が跡形もなくなっているということ。

○波に流れてこし舟

讃岐の国の松山まで船に乗って渡ってきたこと。
自身の命、人生という小舟が、時代の波のうねりに翻弄されながら、
流されてたどりついたということ。

(05番歌の解釈)

「ここ松山の地に配流された崇徳上皇は、帰京の悲願も空しく
そのまま当地で崩御されてしまったのですね。」
                (和歌文学大系21から抜粋)

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       ◆ 御あれ・みあれ ◆

【御あれ・みあれ】

御生(みあれ)と表記します。

「人間をはじめ森羅万象すべてに生命が存在し、人間が呼吸して
いるように天地すべてが呼吸し、活動して相互に作用しあい、
作用しあうところから生命が誕生する。それを御生(みあれ)という。」
    (賀茂御祖神社社務所発行「賀茂御祖神社」より抜粋)

現在、5月15日に賀茂祭(葵祭)が行われますが、それに先駆けて、
5月12日に(御生神事)が行われています。 

上賀茂神社では神社北方の「神山」で執り行われ、下鴨神社では
「御蔭祭」として八瀬近くの御陰神社で行われています。

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      御あれの頃、賀茂にまゐりたりけるに、さうじに
      はばかる戀といふことを、人々よみけるに

01 ことづくるみあれのほどをすぐしても猶やう月の心なるべき
      (岩波文庫山家集145P恋歌・新潮614番・西行上人集)

○賀茂

京都にある地名及び神社名です。
左京区にある下鴨神社(賀茂御祖神社)と、北区にある上賀茂神社
(賀茂別雷神社)を総称して加茂社と呼びます。
古くからの由緒ある神社であり、5月15日に葵祭りが行われます。

○ことづくる

卯月には賀茂祭があり関係者は精進潔斎をします。
その潔斎を言い訳にして、かこつけて…という意味です。

○さうじにはばかる

(さうじ)は精進のこと。
一心に仏道修行を積むこと。心身を清めて行いを慎むこと。
(はばかる)で精進に悪影響があるということ。差しさわりが
あるということ。

○猶やう月の心

賀茂社の「御あれ」神事が終わった後でも卯月が明けないから、
なお心身を浄め続けるという気持のこと。
あるいは、五月は忌み月ですから御あれの精進潔斎の気持を、卯月
が明けて五月に入っても引き続き持ち続けているとも解釈できます。

(01番歌の解釈)

「賀茂祭のための精進潔斎を口実にして、あなたは逢おうとして
くれなかったが、御生を過ぎてもそのままなのは、まだ卯月だから
私に冷たい心のままだからだろうか。」
                (和歌文学大系21から抜粋)

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02 思ふことみあれのしめにひく鈴のかなはずばよしならじとぞ思ふ
        (岩波文庫山家集222P神祇歌・新潮1022番・
              西行上人集追而加書・夫木抄)

○みあれのしめ

賀茂祭の形態にもかなりの変遷があったようです。
「みあれ」そのものにも別の意味があります。賀茂祭は古くは
旧暦四月の中の酉の日に行われていましたが、その3日前の午の
日に御生(みあれ)神事が行われていました。
賀茂祭の酉の日の前夜に、賀茂社にある御生木(みあれぎ)に
神霊を移譲させて賀茂両社に迎えていたようです。
その御生木に注連縄を張って鈴をつけ、注連縄には鈴緒を結んで、
鈴緒を下に引いて鈴を鳴らすということのようです。

○ひく鈴

注連縄に付けられた鈴のこと。引くのは鈴を付けて下に垂らした
鈴緒という綱です。現在でも神社にあります。

○かなはずばよし

叶えられないならばそれも仕方ないということ。
「よし」は望みとは違っていても許容するしかない・・・という、
消極的な(あきらめ)の気持ちを表します。

(02番歌の解釈)

「御生(みあれ)の祭のしめ縄にかけた鈴を引いて、思いが叶えられ
るよう祈るが、叶えられないならば、よもや鈴も鳴るまいと思う。」
           (新潮日本古典集成山家集から抜粋)

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  (後記)

残暑お見舞い申し上げます。

今号はほぼ2か月ぶりの発行になります。この間、両眼の手術を終え
ました。以前は裸眼でも眼鏡をしても資料は読めない状況でしたが、
なんとか読めるような視力に戻りました。でも近眼は治るわけでは
ないので、飛躍的に視力が戻ったわけではありません。ともあれ、
このマガジンを再開できることを私なりに喜んでいます。
今後ともよろしくお願いします。

休んでいる間に、暦では秋になってしまいました。秋になっている
とはいえ、厳しい残暑の日々が続いています。
今年は祇園祭も送り火も見ないままに過ぎ越しましたが、なんとか
今後は充実した日々をと望んでいます。

先日「西行学」第8号が届きました。参考になる論考も多くあります。
皆様も興味がありましたら書店なりでお求めください。
笠間書院発行。4200円です。

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◎ 「西行辞典」第352号 2017年08月26日発行

◎ 発行責任者 阿部 和雄
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◎ 発行システム インターネットの本屋さん「まぐまぐ」を
 利用させていただいています。
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