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西行辞典

件名: 西行辞典 第354号(170924)
2017/09/24
里内裏のこと。場所は現在の烏丸通り
西、上長者町通り付近。1117年新造。1138年と1148年に火災に
遭っています。1153年頃、方忌みにより廃絶しました。
西行の歌は1148年までのものと解釈できます。おそらくは出家前
の歌でしょう。

○竹のつぼ

竹の植えられている中庭のこと。

○おみの衣

小忌の衣。神事用の衣服のこと。

(01番歌の解釈)

「前栽の竹の末葉に降った白雪は、舞人が着ている小忌衣を
ひるがえして舞っている、その袖のように見えるよ。」
            (新潮日本古典集成山家集から抜粋)

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       ◆ 御影 ◆

【御影】

「面影」を敬って言う言葉です。

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01 宮ばしらしたつ岩ねにしきたてゝつゆもくもらぬ日の御影かな
  (岩波文庫山家集124P羇旅歌、261P聞書集260番・新潮欠番・
         西行上人集追而加書・新古今集・西行物語)

○宮ばしら

皇居の柱、宮殿の柱、神殿の柱などをいいます。

○したつ岩ね

(下つ)のことで(つ)は格助詞です。(の)と同様の働きを
しますが、(の)よりも用法が狭く、多くは場所を示す名詞の
下に付きます。
(したつ岩ね)で、下の方の岩、底の方の岩になります。
下にある岩盤のことです。

○しきたてて

この歌では「敷き立てる」こと。倒れないように堅固に、見た目も
立派に建てること。

○つゆもくもらぬ

少しも曇りの無いこと。伊勢神宮の御威光をいいます。

(01番歌の解釈)

「宮柱を地下の岩にしっかりと立てて、少しも曇らない日の光が
射す、神宮のご威光よ。」
                (和歌文学大系21から抜粋)

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 御跡に三河内侍さぶらひけるに、九月十三夜人にかはりて

02 かくれにし君がみかげの恋しさに月に向ひてねをやなくらむ
     (西行歌)(岩波文庫山家集205P哀傷歌・新潮793番)

◎ 我が君の光かくれし夕べよりやみにぞ迷ふ月はすめども
   (三河内侍歌)(岩波文庫山家集205P哀傷歌・新潮794番)

○ねをやなくらむ

「音をや泣くらむ」で、あたりはばからず声を上げて泣く事です。

○光かくれし

「光」は天皇。「かくれし」は崩御したということ。

○夕べより

ここでは昨日の夕方という意味ではなく、二条院が死亡した
7月28日の夕べということです。

(02番歌の解釈)

「あまりの月の美しさに、亡き天皇の面影が恋しくなって、月に
向かって声を上げて泣いていらっしゃるのでしょうか。」
                (和歌文学大系21から抜粋)

(三河内侍歌の解釈)

「我が天皇が崩御されたその夕方から、私は光を失って、闇路に
迷っております。どんなに月が美しくても、天皇の光には及ぶ
べくもありません。」
                (和歌文学大系21から抜粋)

【三河内侍】

寂念の娘です。生没年未詳。西行とは15歳から20歳ほどの年齢差が
あるようです。各歌合に出席しており、千載集初出の勅撰歌人です。
三河内侍は後白河天皇の子である二条天皇に仕えていました。
下の歌は二条院が1165年7月28日に23歳で崩御したあと、50日の
忌明けの時の歌です。7月28日から9月13日では、ひなちが若干ずれて
いるようにも思います。ひよっとしたら二条院崩御はもう少し早い
のかもしれません。

三河内侍の歌は千載集に3首あります。

◎ 衣手に落つる涙の色なくは露とも人にいはましものを
              (二条院内侍三河 千載集740番)

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     公卿勅使に通親の宰相のたたれけるを、五十鈴の畔にて
     みてよみける

03 とくゆきて神風めぐむみ扉ひらけ天のみかげに世をてらしつつ
             (岩波文庫山家集261P聞書集258番)


○勅

天皇が下す命令を言います。
勅撰、勅許、勅勘、勅命、勅願、勅宣、勅使などの成語があります。

○勅使

「勅使」とは天皇の命令を伝える使者のこと。

03番歌の詞書の(公卿=くぎょう)とは朝廷の位階で参議以上の人を
言います。
参議はほぼ三位以上の人を言いますが、四位であっても参議で
あれば公卿です。
公卿は「公」と「卿」に分けられます。
「公」は太政大臣、右大臣、左大臣、内大臣など。
「卿」は大納言、中納言、少納言、などを言います。

○通親の宰相

村上源氏。内大臣源雅通の長男として1149年出生。1202年、54歳
で死亡。
久我(こが)及び、土御門(つちみかど)とも称しました。
後白河院、後鳥羽院などに仕えて活躍しています。通親の養女が
土御門天皇を産んでからは外祖父として権勢をふるいました。
平氏全盛期では平氏にべったりで、初めの妻を離縁して清盛の姪を
めとり、平氏が凋落する間際には、後白河院にすり寄っています。
清盛の姪とも離縁して、後白河院近臣貴族の娘を妻にもしています。
権謀術数に長けた独裁政治家として、政敵の九条兼実も失脚させ
ました。非常にいやらしい政治家としての印象を受けます。

源通親が公家勅使として都を立ったのが寿永二年(1183年)4月
26日のこと。通親35歳。西行66歳。
この月、伊勢神宮の主な祭りもなく、皇室にも特に慶事もあり
ませんでしたので、何のための勅使であるか不明です。源平の
争乱期でもあり、国家安泰の祈願のためであるのかもしれません。

1183年7月、平氏一門は都を捨てて西海に遁走、後白河院や通親は
平氏勢力に取りこまれることを避けて比叡山に逃れています。
この後、壇ノ浦の合戦で平氏滅亡。1185年3月のことです。

○五十鈴

伊勢神宮内宮を貫流する五十鈴川のこと。
五十鈴川は賀歌や神祇歌に詠まれていますが、しかし、別称の
御裳濯川の方がはるかに多くの歌に詠み込まれている川名です。
西行歌の場合でも「五十鈴」の名称はわずかに03番歌の詞書に
一度見えるばかりです。それに比して御裳濯川は歌に五首、詞書に
三回あります。

○とくゆきて

「疾く行きて」の意味。勅使の通親に早く行きなさい、と、
進めていることば。

○神風

伊勢神宮の神威によって吹く風。

○み扉ひらけ(みとひらけ)

「み」は美称の接頭語。御扉とも表記できます。
神殿の扉を開けなさい…ということ。

○天のみかげ

「あめ」は天(あま)の転化した読み方。
「天のみかげ」は、下に紹介する「日のみかげ」とともに、対を
なしていて、大祓えの祝詞の中にもある用語です。
「御蔭」の漢字をあてています。
伊勢神宮内宮に祀られている「天照大神」を指して「天の御陰」
というものなのでしようが、伊勢神宮は天皇家のものでもあり、
同時に天皇家をも指して「天のみかげ」と言っているはずです。

(03番歌の解釈)

「勅使よ早く行って神風をお恵み下さる御戸を開け、そうすれば
大神は神殿に鎮座しながら世を照らし続けるよ。」
                (和歌文学大系21から抜粋)

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  (後記)

本日は20017年9月24日。秋らしい柔らかな日差しが降り注いでいます。
「暑さ寒さも彼岸まで」の言葉通りに、過ごしやすい一日です。
今日はこのマガジンを発行するべく、パソコンと向かい合っています。

    奈良の法雲院のこうよ法眼の許にて、立春をよみける

  三笠山春をおとにて知らせけりこほりをたたくうぐひすの瀧
 (岩波文庫山家集262P残集01番、15P春歌・新潮欠番・夫木抄) 

5日前の19日に5年4か月ぶりに若草山に登りました。表側から登り、
山頂から「鶯の瀧」を見て、新薬師寺方面に下山しました。
若草山も鶯の瀧も当然のように昔日の日と変わらないままにそこに
ありました。
10キロとない短い距離でしたが、目の手術以後は運動らしい運動は
控えていましたから、少しの筋肉痛を味わいました。それは覚悟の
うちでしたし、行って良かったな、と思っています。
またまだ今年の秋の日を楽しみたいものです。それがごくささやかな
ものであれ、楽しめることは良いことに違いありません。
皆さんも、この秋をできるだけ楽しんでほしいものです。

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◎ 「西行辞典」第354号 2017年09月24日発行

◎ 発行責任者 阿部 和雄
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◎ 発行システム インターネットの本屋さん「まぐまぐ」を
 利用させていただいています。
  『まぐまぐ』 URL: http://www.mag2.com/

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