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西行辞典

件名: 西行辞典 第370号(180506)
2018/05/06
こでも
「寂然」とします。29ページや70ページの寂然と西行の贈答歌と
情景は似ていますが、この歌には寂然からの返しの歌がありません。

この歌の詞書は西行法師家集では以下のようになっています。

 『寂然高野にまゐりて、深き山のもみぢといふ事を、宮の法印の
 御庵室にて歌よむべきよし申し侍りしに参り会ひて』

寂然も高野山に登って、西行とともに宮の法印の庵で歌会をした
時の詠歌であることがわかります。

○にしき・錦

金糸銀糸などを用いて華麗に織り込まれた絹織物を指す言葉ですが、
その豪華さゆえに、紅葉や黄葉も錦に見立てられています。

○花見し嶺

桜を見た嶺ということ。晩秋になって春の情景を追憶しています。

○時雨そめつつ

時雨が紅葉の色を深く染め上げるという表現は西行にも数首あり、
万葉集以来の和歌の伝統ともいえます。

(09番歌の解釈)

「色とりどりの錦のあるみ山だよ。春は桜の花を賞(め)でた
この高野の峯を、今は時雨が染めて……」
            (新潮日本古典集成山家集から抜粋)

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     同品文に 第十六我釋迦牟尼佛於娑婆國中
     成阿耨多羅三藐三菩提

10 思ひあれやもちにひと夜のかげをそへて鷲のみ山に月の入りける
                  菩提心論之文心なるべし
             (岩波文庫山家集227P聞書集08番)

○同品文

前歌の聞書集第7番の詞書に「化城喩品=けじょうゆほん」とある
ので、「化城喩品」を指しています。
「化城喩品」は法華経第7品にあたり、法華経七喩の一つだそうです。

悪路を行く隊商のリーダーが途中で幻の城を現出させて、部下達に
希望を持たせて目的地への旅を続ける……という例えから小乗仏教の
悟りは大乗仏教への悟りにと導くための方便、だと言われます。

○第十六

釈迦の前世が第16皇子という書物上の架空のことです。
釈迦の個人名は「ゴータマ・シッダッタ」と言い、インド北部の
釈迦族の浄飯王の王子だったことは確かなようですが、兄弟につい
ては明白な資料がないようです。

○釈迦牟尼佛

(釈迦)の尊称です。他に釈迦牟尼如来・釈迦牟尼世尊などの尊称が
あります。

○娑婆国中

この世の世界すべてに渡って…の意。

○阿耨多羅三藐三菩提

これ以上にない無上の完全な悟りを表すようです。

○思ひあれ

人々を済度し悟りの世界に導こうとする強固な意志を「思ひ」という
言葉に込めています。

○もちに一夜

釈迦入滅の2月15日を指しています。15日は望月の日です。
「もち」は「望月」で、満月のことです。

○鷲のみ山

インド北部の霊鷲山のこと。釈迦が修行した山だと言われています。

(10番歌の解釈)

「深い思いがあるのだろうよ、望月の十五夜に一夜の光を添えて、
霊鷲山に月が入ったことは。」
                (和歌文学大系21から抜粋)

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      尋花欲菩提

11 花のいろの雪のみ山にかよへばや深きよし野の奧へいらるる
            (岩波文庫山家集235P聞書集63番)

○尋花欲菩提

桜の花を尋ねることは同時に菩提につながるという意識での言葉。

○菩提

仏教用語で、煩悩にまみれた世界から悟りの境地に入ることです。
また、悟りの世界そのものを言います。
ここから、死亡すること、極楽往生することをも指し、死後の
菩提を弔う・・・などという言い方をします。
「涅槃」という言葉もほぼ同様の意味です。

○み山

(み)は美称の接頭語。山はここでは、釈迦が前世に修行したという
ヒマラヤの山のこと。

○かよへばや

雪の色が吉野の桜の色に似通うというだけでなく、釈迦の化身とも
言われる吉野の蔵王堂の蔵王権現があることによって霊鷲山と
似通っているという思いを表した言葉です。

○深きよし野の奧

吉野の山の奥深い場所にまで花を尋ねるということと、仏教の
修行なり悟りなりということを等値に見た宗教心の表れでしょう。
より深い場所にこもった方がより修行になり菩提を求められると
いうことです。
このことは宮の法印との贈答歌でも理解できます。

 山の端に月すむまじと知られにき心の空になると見しより
     (西行歌)(岩波文庫山家集135P羈旅歌・新潮1085番) 

(11番歌の解釈)

「花の色が釈尊の修行した雪山の雪の白さに似通うからだろうか、
深い吉野山の奥へおのずと尋ね入られることよ。」
               (和歌文学大系21から抜粋)

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【岩波文庫山家集の「御」表記の歌】

     熊野御山にて両人を恋ふと申すことをよみけるに、
     人にかはりて

12 流れてはいづれの瀬にかとまるべきなみだをわくるふた川の水
        (岩波文庫山家集243P聞書集122番・夫木抄)

○熊野御山

熊野三山のうち本宮大社を指すものと思います。

○両人を恋ふ

同時に二人の異性と恋愛関係にあることを言います。
熊野本宮あたりでの歌会の場であるのかも知れません。
僧侶ばかりが寄り集まって、こういう題詠をしたということである
なら、僧侶も修行一辺倒ではなかったということなのでしょう。
 
○ふた川

固有名詞としてはどこか不明です。
紀伊の国には有田郡の二川と牟婁郡に二川があります。
有田郡の二川は有田川の支流で、二川の上流は三瀬川といいます。
西牟婁郡の二川は地名としてはあっても川名としては確認できず、
おそらは西牟婁郡の二川の可能性はないと思います。
無理に固有名詞として解釈せず、普通名詞として「二つの川の流れ」
というほどの解釈で良いものと思います。

(14番歌の解釈)

「流れてゆけば、どちらの瀬に落ち着くことになっているのか、
私の涙を両方に分けるかのような二川の水は。」
                (和歌文学大系21から抜粋)

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  (後記)

佐佐木信綱博士の「夏は来ぬ」の八十八夜が5月2日。5月5日は立夏。
旧暦では5月15日から夏入り。桜もすでに遠いかなたの話ですね。

今年のゴールデンウイークも今日で終わります。長い連休、旅行など
して楽しまれた方々も多いのでしょう。私はと言えば無職の身、毎日
が休日という結構な境遇なのですが、薫風がやさしく渡る良い季節、
何回かは写真撮りに出かけました。とは言え京都市内の花の名所
などを、ちょっと見てきたという程度です。

私は写真が趣味です。趣味と言えるほどにはうまくは撮れないの
ですが、気が向けば近辺の撮影によく出向きます。花の図鑑風な
ホームページも早くから持っていて、植物園にもよく出向きます。
花のページの更新のためにも撮影は欠かせないのですが、カメラや
花などと遊んでいる間は楽しい時間のようにも思えます。
ことに真冬は肺炎が怖くて実質的に冬眠状態だったので、なおさら
今のこの季節を私なりの楽しみ方で楽しみたいものです。

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◎ 「西行辞典」第370号 2018年05月06日発行

   「創刊号発行 2005年08月10日」 

◎ 発行責任者 阿部 和雄
   http://sanka11.sakura.ne.jp/

◎ 発行システム インターネットの本屋さん「まぐまぐ」を
 利用させていただいています。
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