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西行辞典

件名: 西行辞典 第372号(180603)
2018/06/03
なること。落葉の1枚いちまいに気持ちが沈んでいく様子。
決して「浮かるる」の意味ではありません。
しかし山家の住まいから別の所に浮き出たいという願望によるものと
する解釈も当然に成立するでしょう。

(05番歌の解釈)

「10月になって木の葉が落ちると、そのたびに、ふっと
どこかへ行きたくなってしまう。私の山家は山深くて、
あまりにも寂しいので。」
                (和歌文学大系21から抜粋)

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     山里のはじめの秋といふことを

06 さまざまのあはれをこめて梢ふく風に秋しるみ山べのさと
(岩波文庫山家集55P秋歌・新潮254番・西行上人集・山家心中集)

○山里のはじめの秋

山里に庵を結んでの初めての秋という風にも受け取れますが、ここ
では初秋・中秋・晩秋とあるうちの初秋を言います。

○さまざまのあはれ

秋という季節の内包しているもの、それによってさまざまな感情が
引き起こされることを言います。秋は人を物悲しくさせるという
感傷は古今や誰彼を問わず普遍的なことなのでしょう。

(06番歌の解釈)

「私の山家は山深いので、秋の情趣をひとつひとつ暗示するように
梢を吹く風の音だけで、秋が来たことを知る。」
                (和歌文学大系21から抜粋)

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     山里に冬深しといふことを

07 とふ人も初雪をこそ分けこしか道とぢてけりみ山邊のさと
(岩波文庫山家集103P冬歌・新潮569番・西行上人集・山家心中集)

○とふ人

訪ねて来る人たちのこと。

○道とぢてけり

雪がたくさん降って、道がどこにあるのかわからない程に積もって
いる状況です。

(07番歌の解釈)

「私の山家は山深いので、初雪の頃には雪を踏み分けて訪ねて
くる人もいたが、やがて道が塞がって誰も来なくなる。」
                (和歌文学大系21から抜粋)

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     仁和寺の御室にて、山家閑居見雪といふことを
     よませ給ひけるに

08 降りつもる雪を友にて春までは日を送るべきみ山べの里
          (岩波文庫山家集98P冬歌・新潮568番)

 新潮版では以下のようになっています。

 降りうづむ 雪を友にて 春来ては 日を送るべき み山辺の里
              (新潮日本古典集成山家集568番)

○仁和寺の御室

「御室」は京都市右京区にある仁和寺一帯の地名。
仁和寺一世の宇多法皇が仁和寺の内に御座所(室)を建てた事から
仁和寺は御室御所とも呼ばれ、その後、付近は御室という地名に
なりました。

○よませ給ひける

「よませ給ひける」という文言によって、仁和寺を住持していた
覚性法親王関連の歌だと言えますが、歌からの印象では、あるいは
西行の庵も御室近辺にあったのかもしれません。

○雪を友にて春までは

現在の京都では冬でも降雪のある日は極めて少なく、本当にこんな
状況であったのか、不思議な思いも持ちます。

(08番歌の解釈)

「冬の間はあたり一面埋めつくしてしまう雪を友として閑居を
楽しみ、春がやって来たら花の日々を送るべき、み山辺の里の
御室であるよ。」
           (新潮日本古典集成山家集から抜粋)

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09 さかりみる花の梢にほとときすはつこゑならすみやまへのさと
                    (松屋本山家集)

○さかりみる花の梢

「花の梢」とは山桜のこと。ホトトギスは夏の鳥であり季語も夏
です。季節的には随分と離れている気もしますが、ホトトギが日本に
渡来してくる季節は春から夏にかけてですから、早く渡ってきた
ホトトギスが桜の頃に鳴いたとしても不思議ではなさそうです。

○はつこゑならす

ホトトギスの初めての声。もちろんホトトギスは何度も声を出して
いるのですが、人に聞こえるような声は初めてということ。
渡って来てまだ間がないことを表しています。

(09番歌の解釈)

「花盛りを見る花の梢で、早くもほととぎすが初声を鳴く練習を
している山辺の里よ。」
                (和歌文学大系21から抜粋)

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       ◆ 御幸・みゆき ◆

【御幸・みゆき】

御幸(みゆき・ごこう)=上皇、法皇、女院などの外出を指します。
行幸(みゆき・ぎょうこう)=天皇の外出を指します。

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     承安元年六月一日、院、熊野へ参らせ給ひけるついでに、
     住吉に御幸ありけり。修行しまはりて二日かの社に参り
     たりけるに、住の江あたらしくしたてたりけるを見て、
     後三條院の御幸、神も思ひ出で給ふらむと覚えてよめる

01 絶えたりし君が御幸を待ちつけて神いかばかり嬉しかるらむ
          (岩波文庫山家集118P羈旅歌・新潮1218番・ 
                  西行上人集・山家心中集) 

○承安元年

1171年のことです。この年、嘉応の元号は1171年4月21日まで。同年
同日から承安元年となります。第80代高倉天皇の治世にあたります。
高倉天皇は後白河天皇の皇子です。皇統は後白河→二條→六條→
高倉→安徳→後鳥羽と続きます。
後白河院は5月29日に京都を立ち、6月1日に住吉大社に詣で、熊野に
向かい、京都に帰りついたのは6月21日ということです。すごいと
いうしかない強行軍です。
西行は1171年6月2日に住吉大社に参詣したことになります。
西行54歳の年です。

○院

後白河院のこと。

○住吉に御幸

後白河院が1171年6月1日に住吉大社に詣でたことを指します。

○あたらしくしたてたり

社殿が新しく造りかえられたことをいいます。

○後三條院

第71代天皇。1034年〜1073年。40歳で崩御。
後三條院の1073年2月。母の陽明門院と岩清水・住吉・天王寺に
御幸しています。同年5月、後三條院没。

○絶えたりし

1073年の後三條院の御幸以来、天皇や院は住吉大社に参詣して
いなかったようです。ほぼ100年ぶりの参詣ということです。

(01番歌の解釈)

「後三條院の親拝以来絶えていたが、この度の後白河院の御幸を
待ち迎えられ、住吉明神はどんなに嬉しく思っておいでのこと
だろうか。」
            (新潮日本古典集成山家集から抜粋)

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  (後記)

今年もすでに6月。樹々の緑はさらに濃さを加えていて、竹は秋を
迎えつつあり、入梅ももうすぐという季節。毎年のことながら、
豪雨・水害禍による被災がないことを今年も願うばかりです。

 雲雀たつあら野におふる姫ゆりのなににつくともなき心かな
         (岩波文庫山家集216P釈教歌・新潮866番・
               西行上人集追而加書・夫木抄)

今号の校合・校正が終わっていないのに丹波町和知の和知山野草園で
ササユリが見頃という報に接したので、昨日に行ってきました。
山陰線は複線化されていず、かつ和知駅はローカル駅なので、駅頭に
降り立つまでに最寄り駅から二時間近くを要しました。山野草園は
自然の地形をそのまま利用した良い園と感じましたが、すでに花の
多くが終わっていたことと、行きつくまでに時間を要することが
ネックだとも思いました。
和知駅からも歩いて25分。もっと短時間で行くことができれば四季
折々に行きたいものです。

山家集に百合の花の歌は「姫百合」しかありません。笹百合の歌は
ないのですが、古来から山野に自生していた種類の百合ですから、
当然に西行法師も笹百合の花を見ている事でしょう。独特の雰囲気を
備えた優雅な花だと思います。

これから植物園では山百合、鬼百合など多様な百合が咲き出します。
時間を見ては植物園に行きたいと思っています。

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◎ 「西行辞典」第372号 2018年06月03日発行

   「西行辞典創刊号発行 2005年08月10日」 

◎ 発行責任者 阿部 和雄
   http://sanka11.sakura.ne.jp/

◎ 発行システム インターネットの本屋さん「まぐまぐ」を
 利用させていただいています。
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