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西行辞典

件名: 西行辞典 第361号(180105)
2018/01/05
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      ◆◆◆◆  西行辞典  ◆◆◆◆
                        
                  vol・361(不定期発行)
                   2018年01月05日号

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         今号のことば    

       1 みちのくに・陸奥国 03
       2 出羽の国
       3 みつ
 
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       ◆ みちのくに・陸奥国 03 ◆

【みちのくに・陸奥国】

「道の奥の国」という意味で、陸奥の国のことです。陸奥(むつ)は
当初は(道奥=みちのく)と読まれていました。
927年完成の延喜式では陸奥路が岩手県紫波郡矢巾町まで、出羽路が
秋田県秋田市まで伸びていますが、初期東山道の終点は白河の関
でした。白河の関までが道(東山道の)で、「道奥」は白河の関
よりも奥という意味です。

大化の改新の翌年(646年)に陸奥の国ができました。
陸奥は現在の福島県から北を指しますが、その後、出羽の国と分割。
一時は「岩城の国」「岩背の国」にも分割されていましたが、
西行の時代は福島県以北は陸奥の国と出羽の国でした。
陸奥の国は現在で言う福島県、宮城県、岩手県、青森県を指して
います。
出羽の国は山形県と秋田県を指します。

ここでは「陸奥」という名詞の入っている詞書と歌も同時に取り
上げます。加えて、最後に陸奥の国で詠んだ歌、陸奥の国を詠んだ
歌も紹介します。これまでに紹介したことのある歌は参照として
マガジンの発行号番号だけにとどめ、初めての歌は通常のように記述
することにします。

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「名取川」(第236号・245号参照)

     名取川をわたりけるに、岸の紅葉の影を見て

04 なとり川きしの紅葉のうつる影は同じ錦を底にさへ敷く
     (岩波文庫山家集130P羇旅歌・新潮1130番・夫木抄)
           
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「信夫」(第245号・316号参照)(第335号・342号参照)
         
      ふりたるたな橋を、紅葉のうづみたりける、渡りに
     くくてやすらはれて、人に尋ねければ、おもはくの橋と  
     申すはこれなりと申しけるを聞きて

05 ふままうき紅葉の錦散りしきて人も通はぬおもはくの橋

   しのぶの里より奧に、二日ばかり入りてある橋なり
     (岩波文庫山家集130P羇旅歌・新潮1129番・夫木抄)
              
  あづまへまかりけるに、しのぶの奧にはべりける
社の紅葉を

06 ときはなる松の緑も神さびて紅葉ぞ秋はあけの玉垣
         (岩波文庫山家集130P羇旅歌・新潮482番)
               
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「信夫・なこその関」(第197号参照)
         
07 東路やしのぶの里にやすらひてなこその関をこえぞわづらふ
           (岩波文庫山家集280P補遺・新勅撰集)
              
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「武隈」(第236号・245号参照)

     たけくまの松は昔になりたりけれども、跡をだにとて
     見にまかりてよめる

08 枯れにける松なき宿のたけくまはみきと云ひてもかひなからまし
         (岩波文庫山家集130P羇旅歌・新潮1128番)
            
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「宮城野」(第223号参照)(第159号・257号参照)

09 あはれいかに草葉の露のこぼるらむ秋風立ちぬ宮城野の原
   (岩波文庫山家集58P秋歌・西行上人集・御裳濯河歌合・
               玄玉集・新古今集・西行物語)
             
10 萩が枝の露ためず吹く秋風にをじか鳴くなり宮城野の原
           (岩波文庫山家集68P秋歌・新潮430番)
            
(参考歌)

 宮城野や雪も色あるふる枝草ことしの秋も花さきにけり
                     (蔵玉和歌集)

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「末の松山」(第190号参照)             

11 たのめおきし其いひごとやあだになりし波こえぬべき末の松山
          (岩波文庫山家集159P恋歌・新潮1289番)
            
12 春になればところどころはみどりにて雪の波こす末の松山
               (岩波文庫山家集233P聞書集)
         
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「松島・雄島」(第113号・226号参照)
           
13 松島や雄島の磯も何ならずただきさがたの秋の夜の月
      (岩波文庫山家集73P秋歌・西行上人集追而加書)
          
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「平泉・衣川」(第292号・343号参照)(第284号・348号参照)

   十月十二日、平泉にまかりつきたりけるに、雪ふり嵐はげしく、
   ことの外に荒れたりけり。いつしか衣川見まほしくてまかり
   むかひて見けり。河の岸につきて、衣川の城しまはしたる、
   ことがらやうかはりて、ものを見るここちしけり。汀氷りて
   とりわけさびしければ

14 とりわきて心もしみてさえぞ渡る衣川見にきたる今日しも
           (岩波文庫山家集131P羇旅歌・新潮1131番)
           
   双輪寺にて、松河に近しといふことを人々のよみけるに

15 衣川みぎはによりてたつ波はきしの松が根あらふなりけり
          (岩波文庫山家集260P聞書集・夫木抄)

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「むつのく・外の浜」(第20号・第360号参照)

16 むつのくのおくゆかしくぞ思ほゆるつぼのいしぶみそとの濱風
         (岩波文庫山家集173P雑歌・新潮1011番・
              西行上人集追而加書・夫木抄)  

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          ◆ 出羽の國 ◆

【出羽の國】

奥羽地方の羽の国で、現在の秋田県と山形県をあわせて出羽の国
と言っていました。
出羽の国は明治になって羽後(秋田県)と羽前(山形県)に分割
されました。
現在では(では)と発音するのが普通ですが、それは(いでは)
から転じた呼び方です。(出(い)でて)が(出(で)て)と変化
したのと同様です。

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01 あはれいかにゆたかに月をながむらむ八十島めぐるあまの釣舟
              (岩波文庫山家集243P聞書集)

○八十島

本意は多くの島々の意味。小野篁の下の歌などがそうです。

◎わたの原八十島かけて漕ぎ出でぬと人には告げよ海人の釣舟
              (小野篁 「古今集・百人一首」)

上の歌とは別に、大阪湾・瀬戸内海・陸奥などの歌もあります。

◎住吉や八十島遠く眺むれば松の梢にかかる白浪
                (後鳥羽院集)

◎塩窯の浦吹く風に霧晴れて八十島かけてすめる月影
               (藤原清輔 千載集285番)   

ですから特に出羽の歌とすることもないのですが、「能因歌枕」
「和歌初学抄」には出羽の国の歌枕とありますので、ここでも
それを踏襲します。

○あまの釣舟

「あま」は水産の仕事で生計を立てている人のこと。漁師のこと。
「釣舟」は海人が魚を釣って獲るために使用する舟。
最後の「海人の釣舟」という体言止めが歌を引き締めています。

(01番歌の解釈)

「ああどんなにゆったりと月を眺めているだろう。多くの島を
めぐる海人の釣舟では。」
                 (和歌文学大系21から抜粋)

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下の02番歌については出羽の国での歌という確証はありません。
しかしその可能性がわずかにあります。「出でば」が「出羽」と
掛けている場合のみです。

  たぐひなき思ひいではの櫻かな薄紅の花のにほひは

上の歌の場合は詞書によって出羽の歌と確認できますが、02番歌の
場合は出羽の歌とするには無理がありそうです。

    遥かなる所にこもりて、都なりける人のもとへ、
    月のころ遣しける

02 月のみやうはの空なるかたみにて思ひも出でば心通はむ
    (岩波文庫山家集76P秋歌・新潮727番・西行上人集)
             山家心中集・新古今集・西行物語)

○都なりける人

個人名までは不明です。新古今集では恋の歌として選入しています。
そのために「都なりける人」は西行の妻ではなかろうかという説も
あります。

○月のみや

(月の宮)ではなくて(月・のみ・や)のことです。
(月だけが)という意味となります。

○うはの空なる


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